歴史画や風景画などでその名が知られるイギリスの画家・ジョージ・カーターは、若くしてロンドンにのぼり、ロイヤルアカデミーやソサイエティ オブ アートなどで作品を展示をしていました。
カーターが描いた作品でよく知られているのは、『イギリス軍艦ケベックとフランス船 ラ・シュルヴェイヤントの戦い』と、今、ご覧いただいている、『キャプテン ジェームズ・クックの死』で、いずれも版画の複製が作られるほどの人気がありました。
この作品は、実はジョン・ウェバーの絵を元にして描かれています。キャプテン・クックの3度目の航海の時、製図技師であったのが、このジョン・ウェバーだったのです。
イギリスの探検家であったクックは、西洋人として初めてハワイにたどり着きました。しかし、 クックと先住民との間に起きた誤解がもとで争いとなり、1799年2月14日、カバワロアの海岸でクックは命を落とします。 ウェバーが、この争いの現場に居合わせた可能性は低く、彼の絵は、おそらく、関係者からの話を元に想像で描かれたものと思われます。さらには、実際、現場となった場所は平らな土地でしたが、ウェバーは崖を描き足すなど、より劇的な印象を与えようと意図的に創作したのでした。
こうして描かれたウェバーの絵は、彼の航海日記が出版される2年前の1782年には、版画となって、世に広まりました。
ウェバーもカーターも、キャプテン・クックをイギリスの〝英雄〟として讃える情景を絵を通して、再現することに成功したといえるでしょう。