ハワイの神話に登場する〝マウイ〟は、ポリネシア一帯でも多くの物語となり、語り継がれています。
太陽があまりに早く沈んでしまうため、母親の女神・ヒナがカパを十分に乾かせないで困っているのをみて、太陽をゆっくり動くようにしてみたり、火の秘密を盗んでみたり・・・と、マウイはいたずら好きな神といわれています。
最も知られているのが、マウイが海に沈んでいた島を釣り上げる話でしょう。この話は、ミクロネシア、メラネシアにも似たような言い伝えがあり、ここハワイで〝島を釣り上げるマウイ〟といえば、連想するのが、〝聖なる釣り針・マナイアカラニ〟なのです。
ある日、マウイは自分にも釣りの腕があること証明しようと、兄弟たちにカヌーを漕がせ、海にでかけます。マウイはいいます。「釣が始まったら、決して振りむかないでくれ―」と。 そして女神・ヒナの飼っていた鳥の羽を聖なる釣り針・マナイアカラニに取り付け、海に投げ入れました。すると、巨大なピモエがかかり、乗っていたカヌーは揺れに揺れ、兄弟たちは必死でカヌーを押さえます。ピモエが水面にあがると、なんと即座に石へと変わるではありませんか。魚見たさと恐怖心から、兄弟たちは我慢しきれず振り向きます。 その瞬間、つり糸は切れ、マウイは一つの巨大な島ではなく、8つの島々、すなわちハワイ諸島を引き上げたのです。 怒りに震えたマウイは、聖なる釣り針・マナイアカラニを空高く投げました。すると釣り針は星座となり、春から夏にかけてみられる、さそり座の尻尾になったと言われています。