ハレ・ピリ
ビショップ・ミュージアムの初代館長 だったウィリアム・ブリッグハムは、1903年、当時建設中だったハワイアンホールに何を展示すべきか、模索していました。 館長は、カウアイ島に住む友人のジョージ・ウィルコックスにハワイの伝統的な草葺きの家屋である〝ハレピリ〟を、どうにか手に入れたいと相談しました。 ハレ・ピリの数は激減していて、この伝統家屋を保存することは文化財を保護する意味でも、急務だったのです。 幸い、カウアイ島の西側にあるミロリイで、建てられてから百年は経過したと思われるハレピリが見つかりました。 このハレピリは慎重に解体され、ホノルルに送られたあと、ハワイアンホールで新たな縄とピリの葉を用いて復元されました。 ブリッグハム館長の予想は現実となり、20世紀後半には、このハレピリが、伝統に則って建てられたハワイ最後の家屋となってしまうのです。
ハワイの伝統的芸術への復興である〝ハワイアンルネッサンス〟が、1970年代から80年代にかけて興り、専門家たちは、このハレピリの建築技術を学ぼうとビショップ・ミュージアムを訪れるようになります。
2006年から2009年にかけて、ハワイアンホールの改装工事が行われ、ハレピリは、いったん解体されます。 復元作業では、1.6キロの長さの縄や、丁寧に選別された何千ものピリの葉が用いられるなど、さまざまな独自の工夫が施され、かつての先人たちの技術を受け継いだ新しい世代の手によって、ハレピリは現代に力強く復元されたのです。